2017年2月26日日曜日

機動戦士ガンダム00(1期・2期)を見終えた

 ブログに「観」とつけたからにはアニメとか見た後に感想とか書き残すのを習慣化したい。

 Amazonプライムビデオでの配信が2月いっぱいで終わるという事で、ここ数週を使って00のTV版1期と2期を一気見したのでその感想を。ネタバレバリバリなので未見で気にする人はご注意下さい。

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 放送当時はガノタ特有の厨二病的なアレで宇宙世紀原理主義みたいなのをこじらせていた上に、序盤数話を見逃したことで話が拾えなくなりドロップアウト。ちょうど同時期にガンダムエースを購読していたので、話の概略とキャラ、一部設定ぐらいは知ってはいるものの、ほぼ未見という状態です。

 とりあえず総評として、大まかに知っていた概略から想像できるものよりも更に面白いアニメで、非常に満足でした。色々と引っかかる点やうーん?という部分もありましたが、このややこしい感じの設定とテーマで2期50話分を崩壊せずにまとめきったというだけでも絶賛できると感じます。

しかしもうこれ1期の放送当時から10年近く経つんですね。時間の流れ早すぎて刻の涙流れる……





さてここからは多少具体的に。

 1期の世界は地球に統一政府が確立しておらず複数の勢力が争っている世界設定、更に各地域には反政府勢力があったりと、放っといてもややこしい泥沼ワールド。
大国同士が机の上では握手しながらお互いの足を踏み合っているような雰囲気があり、世界情勢複雑怪奇なりと言う感じで非常に好みな設定。

 その中に紛争根絶の名目でソレスタルビーイングが突っ込んでいき、更にややこしくしていく話の流れは中々複雑。複雑と言っても脳内で処理できないほどではありませんが、登場人物の数とかから考えて、アニメで処理しきれる勢力数のギリギリのラインはこのあたりなのかしら、と思わされる所はありました。

 1期終盤では、CBが戦争に次々武力介入するのは戦争根絶どころか話を更にややこしくしていくだけで、戦争根絶の手段としては……? という当然の疑問に対し、反ソレスタルビーイングという旗印のもとで世界が統合されていき、複雑だった対立構造が整理され、いつしか世界はCB対世界という構造に。

 この場合、ソレスタルビーイングは世界にとって倒されるべき敵なのでは? 世界を団結させるための憎まれる敵に過ぎないのか? 紛争根絶とは……世界の統合とは……という形で最終決戦に向けて状況が加速していく話の流れは強烈かつ巧みで非常に良いものでした。よく作ったなぁこれ……


 それと比べると2期は大分シンプルな社会構造になり、じゃあくな政府vs反政府勢力、というような戦いになっていきます。
 個人的には各勢力のお国柄的なものとか、自勢力の利益を求めて表裏で殴り合ってる感じが薄れて均一化されてしまった感があるのは残念な感じ。均一化の面白みのなさと言うような部分はある程度意図的な部分もあるかもですが。まぁ1期のエンドからすれば当然こうなるべきですし、1期をやりきった上で2期でやりたかったであろうテーマをやるためには当然こうなるかしらという感はありますが。
 (余談ながら、この辺書いていて00の世界の統合・対話の大切さ、というのは滅茶苦茶現代政治的なテーマなんだなーと思った。分裂しつつあるEUとか、統合の是非みたいなのは最近とても良く聞く)

 最終的に統合に乗っかって勝手に人を支配しようとしたクソ野郎をナントカ叩き潰して人類大勝利、希望の未来にレディゴー……と言うにはまだ不安要素は多く、世界は矛盾と対立に満ち溢れているが、一つ一つ学びお互いを知ることで障害を乗り越えていこう。結局世界を壊すも守るも個々の人間の知性と善意に託されている……というようなラストの流れは若干説教臭みを感じつつも、(説教臭いゆえに?)SFみがあり良いオチだったと思います。
 本編終了の10年後20年後、あるいは50年や100年という未来には人類間の対話が進み、自然にソレスタルビーイングが不要になっていくのだろうかと思いましたが、劇場版は本編終了2年後やぞと聞いて真顔。人類の平和と統合どころじゃないでしょそれ……早いとこ観なければ……


 しかし1期にしろ2期にしろ終盤の駆け足感が強く、ラスボスがパッとしない感じだったのは少々残念。アレなんたらさんは雑に出てきて雑に死んでいった感じでしたし、リボンズとイノベーター勢は超越者的なポジションの割に人間臭いというか権力欲とかが露骨。そうなった理由や動機も説明されないので、ちょっと小物臭が強い。ああいうポジションの人間が人間臭い理由で色々やらかすのは皮肉めいていて面白いっちゃ面白いんですが。
 まぁ分かりやすい巨悪があってそれを倒せば済むような話じゃないんやぞ、ということでもあるんですかね。


 キャラクター的には、2期の尺をたっぷり使ったおかげでキャラクターの変化みたいなものがよく出ていたなぁというのが通して観た上での感想。あまり軽率にあざといタイプのキャラが出てこなかったのも良い。1期はCB側のキャラ描写が薄めな感はありましたが、ラストの大量死を乗り越えて皆大人になった……特に刹那とティエリアの二人は2期でホントに成長したなぁと感慨深い気分にさせられました。

 主人公として刹那の成長と変化は特に印象深く、「どうしてこのキャラはこうなったのか」「何に影響されて変革していくのか」「刹那にとってガンダムとは何なのか、何になっていくのか」というのがしっかり描写されていたお陰でとても感情移入できました。お前がガンダムだ……!
 特に2期終盤のフェルトとのシーンで「彼女とはそんな関係じゃない」とか言い出した時は「そんな関係」じゃないんだよそういう機微理解できるようになったのかよお前! と思わされ、小さいながら一番成長を実感したシーンでした(もっと良いシーンあるだろ)

 沙慈もなんかネットだと結構悪く言われがちなキャラなようですが、先進国の一般人代表(?)ポジションとしてとても良いキャラだったと思います。
 2期前半とか「お前たちが何もしなければ世界は平和だったのに」 というような事を何度か沙慈が言うのに対して、劇中CBメンバーと「1期を通して観た視聴者」は、刹那はじめメンバーの過去や1期序盤の武力介入を通して「沙慈の見ていた世界は平和だったかも知れないけど、世界中に紛争は沢山あったしそこで人は死んでいたんやぞ」 という事を知っている、というあたりは冷徹でとても良いシーン。
 現実の日本に住む身としても実際中東とか東南アジアとかアフリカの紛争地は普段見ている「世界」に入ってねえよなと身につまされるものがあり、とても印象的なシーンでした。

 また、敵役もそれぞれ勢力ごとにカラーがしっかり出ており、各勢力のキャラが立っているのも非常に良いところ。
 ユニオン勢は1期を通して有能なライバル役として素晴らしい活躍を見せてくれ、グラハムのちょっとイッちゃったライバルっぷりは刹那のガンダムバカっぷりと好対照。有能なライバルというのは観ていてテンション上がります。
 人革連勢はガンダム名物強化人間テーマをこってりやりつつ、父と子とは……人造人間の感情とは……みたいな事を2期まで通してやっていて非常に良い。
 一方AEUは1期の範囲では完全にギャグ枠じゃねえかという感じはありますが、2期でカティ大佐が頑張っていたのでだいぶ印象が改善。
 あとサーシェスの強烈なキャラクター性すごい。関わった物事を全てグッチャグチャにするクソ野郎っぷりは見ていて気持ちいいレベル。なるほど焼け野原ひろし……


 総合して、時々言われている「ガンダム初心者に薦めやすい作品」というのは確かにその通りかも、と感じました。シナリオ的な部分では結構ややこしいテーマに挑戦しつつ、しっかりそのテーマで求められるだけの話をやっているので安心して見られます。
また、初心者に薦めるという基準で見ると宇宙世紀作品は作品間のつながりが強いのでどこから見始めたものか厳しい所がありますが、00は独立世界なのでその辺の問題もなく。

 作品としても作られた年代が新しいので作画や雰囲気の面での問題も少ない(唐突に島に行ったり耳からマイクが出てこない……)(それは劇場版でカットされただろ)ですし、配信やらレンタルで観ることも容易、関連作品も充実と、確かに安心して薦められるものだなぁと思いました。
ガンダム系未見の人はとりあえずここから始めてみたらどうでしょうと言いたいところですが、プライム配信終わるんだよなぁ……早めに復活してくれると良いですね。

 さて次は何を見ようかと考えつつ今回はこの辺りで。今月は卒論作業とか忙しかったので寂しい更新状況になりましたが、来月からは出来れば月二回ぐらいは更新したいですね……